ライトノベル 半分の月がのぼる空7 レビュー

タイトル 半分の月がのぼる空7
著者 橋本紡
イラスト 山本ケイジ
出版 電撃
発売日 2006年6月


執筆者:jade 評価:
秋。里香にとって初めての文化祭───山上祭。
裕一はまったくやる気がなく、だらけにだらけていた。
だが、山西に無理やり引っ張られていった視聴覚室では『古典ロシア映画上映会』なるものが始まろうとしていて、それはつまり先生にバレたら停学もののいわゆるエロビデオ観賞会で、そこに先生が突入してきて……
一方、里香は、みゆきと共に演劇部の練習を見学していた。そこで部長の柿崎に、ある目的で声をかけられ──。
書き下ろし番外編『雨 fandango』の前編に、『気持ちの置き場所』、『君は猫缶を食えるかい?』、『金色の思い出』の番外編三篇を加えた『半月』短編集第1弾。

短編三篇は過去に電撃hpやドラマCDに収録されたもので、唯一の書き下ろしも時系列的には6巻のエピローグのちょっと前の話。
密かに期待していた6巻以降の二人の姿を描いたものはありませんし、8月に出る8巻にも描くつもりはないみたいですね。よって7,8巻で物語の評価を一変するようなことはないでしょう。

それでは、それぞれの短編について簡単に触れていきます。
まず書き下ろしの『雨 fandango』
これは前編だけしか収録されていないので評価は保留しますが、これだけは言えます。
熱かった!
教師にエロビデオを見つからないために立てこもってたはずが、いつのまにか男と男の魂をかけた戦いになってるし(笑
こういうバカな男たちの無駄に熱いノリは大好きですね。

『気持ちの置き場所』
亜希子さんの恋のお話なんですが、正直微妙だったかな。
あの凶暴な亜希子さんが気弱で冴えない男に短期間で恋に落ちるなんて無理がありすぎ。
恋に落ちた背景を幼いときのとある出来事に求めてるんだけど、理由になるにはちょっと弱すぎて最後まで違和感が拭えませんでした。

『君は猫缶を食えるかい?』
猫の餌を前にした裕一、司、山西の三人の駆け引きを描いた話。
…だったはずが、いつのまにか裕一と父親の心温まるエピソードに。
本編ではろくでなしのダメ人間の姿しか裕一の記憶に残っていなかった父親ですが、彼の中に少しでも良い思い出が残っていたのは救いですね。

『金色の思い出』
里香の父親の形見である『高瀬舟』をめぐる、まだ何も始まってなかった頃のお話。
里香が裕一に心を開くきっかけとなるエピソードです。
印象の残ったのは亜希子さんが裕一のことをどう思っているか尋ねたときの里香の答え。
この時点では二人は知り合ったばかりですから、案の定、ばっさり切り捨てられるんですが、その容赦のない答えには同情を禁じえません(笑
この答えを見る限り、このエピソードがなければ、砲台山に一緒に行くようなこともなかっただろうし、当然二人の物語は始まらなかったでしょうね。

“普通の少年と、普通の少女の、普通の話”は6巻で幕を閉じ、ここから先は物語の余韻をかみ締めるために用意された物語。
里香と裕一とその周囲の人々の日常を垣間見ながら、これまでの物語を懐かしむのが正しい楽しみ方だと思います。


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